研究内容

単量体から多量体へ:有用な生物活性をもつ多量体天然物の合成に向けて

種々の生物活性を有する天然物の全合成研究

多量体構造を有する各種天然物の合成研究

植物や微生物が産出する化合物の中には,一定の分子構造が複数結合することで強力な生物活性を示すものが知られています.我々は,抗 HIV-1 活性をもつ3量体クロメノキノンであるコノクルボン,抗腫瘍活性をもつ2量体キサントンであるセカロン酸,抗菌・抗腫瘍活性をもつ2量体ベンゾフルオレンであるロマイビチシンなどを標的化合物とする全合成研究を行っています.

多量体構造を有する各種天然物:全合成の標的化合物
多量体構造を有する生物活性天然物:全合成の標的化合物

環化反応を利用した天然物の合成研究

我々の研究室では,環化反応を鍵工程とする各種天然物の全合成研究を展開しています.例えば,ベンザインとフランとの Diels-Alder 反応は,単量体クロメノキノンであるテレティフォリオン B の全合成に応用されています.現在,エノールキノン等価体とエノンとの Michael 反応を鍵工程としたブラジリキノン類の全合成を目指しています.

環化反応を利用した天然物の合成研究 HTML 上で縮小
環化付加反応を利用したポリケチド系天然物の合成研究

前立腺がんのPET診断薬および治療薬の創出を目的としたPSMAリガンドの最適化研究

前立腺がんは、男性のがんの中で罹患率の高いがんのひとつであり、高齢化社会と共にその罹患率は年々上昇し続けています。しかし、前立腺がんの診断方法はまだ精度が不十分であり、より精度の高い診断方法の確立が急務です。近年、PSMA (Prostate Specific Membrane Antigen) と呼ばれる前立腺がん細胞に過剰発現する抗原が発見されました。我々はPSMAに結合する有機化合物の最適化を行い、PET診断薬および治療薬の創出を試みています。

前立腺がんのPET診断薬および治療薬の創出を目的としたPSMAリガンドの最適化研究
前立腺がんのPET診断薬および治療薬の創出を目的としたPSMAリガンドの最適化研究

遷移金属触媒を用いた脂肪酸の合成研究

生体内には様々な脂質分子が存在し、その基本成分・前駆体として中心的な役割を果たすのが 脂肪酸です。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大きく分類されます。生体内において脂肪酸はアシルCoA へ変換、活性化された後に、様々な生命現象を制御する脂質分子に変換されています。また現代では脂肪酸骨格を有する医薬品が多数登場しています。我々は遷移金属触媒の有する特異な反応性、@炭素−炭素結合形成反応、A二重結合の移動反応に注目し、脂肪酸の効率的な変換反応の開発を目指しています。最近になって、不飽和結合をもつ脂肪酸誘導体に対して芳香環と水素を一挙に導入する還元的ヘック反応を見出しました。温和な条件(室温)で進行する本反応は単に変換反応の有用性に留まらず、工業的合成にも大きな進展をもたらします。

遷移金属触媒を用いた還元的ヘック反応の開発
遷移金属触媒を用いた還元的ヘック反応の開発